「シロアリが世界で最も恐れる男」誕生秘話

「シロアリが世界で最も恐れる男」誕生秘話
シロアリが世界で最も恐れる男
前田 哲宏

「オレ、なにやってんだろ?」建築系大学院卒、シロアリ駆除会社へ行く

ぼくは、株式会社ミガキという建築士事務所の代表をしている前田哲宏と申します。
昭和49年(1974年)生まれで、富山県の八尾町という山間部の田舎で生まれ育ちました。
ぼくの会社は、会社のロゴマークに「Builder Support Project(ビルダー サポート プロジェクト)」とあるように、住宅建設を主業務とする工務店やハウスメーカー(ビルダー)のさまざまな業務をサポートする仕事をしています。

また、社名である「ミガキ」は、「磨き」のミガキです。
工務店やハウスメーカーがもっている総合的な技術や知識、経験を「磨き」あげて、より価値のある事業者になっていただくことがぼくたちの仕事なのだと信念を持って日々仕事をしています。

さて、そのような仕事とシロアリ駆除が結びついているのかすこしお話させていただこうと思います。
ぼくは大学院で建築学を専攻していました。卒業後、建築系の商社みたいな企業に就職しました。「商社みたいな」というのは、建築に関するものならとりあえずなんでもやってる会社だったんです。
建材販売や製材販売、産業廃棄物、建物の工法開発、各種建築専門工事などなど、さまざまな事業をおこなっており、その事業の中に「シロアリ駆除工事」がありました。
その会社の創業は、ネズミやシロアリ駆除をしていた会社で、ぼくが入社当時には全国各都道府県に支店を持つ大きな会社でした。創業した社長はもちろん、役員や支店長クラスでもほとんどシロアリ駆除の豊富な経験をもった人たちという会社でした。

ぼくも入社してからは、さまざまな業務をこなしながら、床下にもぐってシロアリ調査や駆除工事の日々という経験を重ねました。
ぼくがシロアリという昆虫を見たのはそのときが初めてでした。
当時は「大学院を出て、オレ、なにやってんだろ?」と思いながらシロアリ駆除していたことがなつかしく思い浮かばれます。
そのときの経験や知識が、まさかこれからのボクの仕事のあり方をかたちづくるとは夢にも思いませんでした。

日本でたった二人。シロアリを駆除する一級建築士の誕生

ぼくは一級建築士という建築に関しては最高クラスの国家資格を持っています。日本で最も高い超高層ビルである あべのハルカスでも東京スカイツリーでもなんでも設計できてしまう資格です。
しかし、そういった設計をするためには、それなりの企業に勤めてさまざまな大きなプロジェクトの経験をしたり、多くの人をまとめたり、すぐれた総合力をさらに鍛えて発揮しなければなりません。ぼくはそういったすごいことはできません。

でも、新卒で入った会社を辞めたあとに勤めた建築設計事務所では、木造住宅に関しては現場の大工さんに怒られながらもほんとうに多くのことを学びました。
部材の名前から釘の打ち方、構造や断熱、防水、耐震、新築、増築、改築、仕事の仕方まであまり人が経験できない視座で勉強させてもらったと思っています。
そのときの経験を生かして、いまでは建築士資格の専門学校で講師として学生に偉そうに指導もしています。

ぼくは、建築設計事務所に勤めている頃から考えていたことがありました。
「事務所を独立したら、シロアリ駆除もやりたい。」
じつは、建物の構造や断熱、防水などの仕組みを詳しく知っていると、シロアリ駆除にとても役立つことが山ほどあるんです。
建物の仕組みとシロアリの生態の両方を知っていると、シロアリが発生する原因も効果的に駆除する方法も、ものすごくよくわかるんです。さらに、シロアリに被害を受けた場所をきちんと修復もできます。

このように、建築士としての経験と知識をもってシロアリ駆除をすることは、とてもメリットがあります。
シロアリ駆除の資格には「しろあり防除施工士」があります。
じつは、「一級建築士」と「しろあり防除施工士」の両資格を持っているのは、日本でたった2名だけです。それを強みとした「あんしん白アリ北陸」を株式会社ミガキのシロアリ駆除部門として立ち上げました。

シロアリが世界で最も恐れる男。講演をはじめる

一級建築士という社会的信用もあってか、シロアリ駆除や調査の依頼がすこしづつ増えてきました。
いま、会社の事業別利益から見ても、シロアリ駆除工事の割合は3割ちかくあります。
仕事が増えるのはもちろん会社を経営しているものとしてうれしいのですが、昨年ぐらいからシロアリ事業について、たのしい変化が出てきました。
「シロアリの話をしてくれませんか」という講演依頼が県内外からやってくるようになってきたんです。
建築士の団体である建築士会主催の講演会では、建築の専門家向け用にしろありの生態や現在主流となっている高断熱高気密住宅のしろあり対策についてお話させていただいたりしています。

また、県外のシロアリ駆除業者さんなどからは「最近、住宅のシロアリ予防工事をするハウスメーカーが少なくなってきた。自分がその必要性を伝えたくても自分の商売につながるというので説得力がない。」ということで、建築士という立場から建築業者の方たちにシロアリの正しい知識を伝える目的でお呼びいただいたこともありました。

こうした経験をさせていただいて思ったことは「一級建築士+しろあり防除施工士としての自分ができることは意外とあるんじゃないのか?」ということ。
そんなことを考えていると、だんだんとワクワクしてくる自分がいることがわかってきました。自社の集客や利益ではない、もっと幅広い活動をやってみたいと思うようになってきました。

「あんしん白アリ」を富山から全国へ
そして、シロアリ業界の発展へ

ぼくたちのしろあり駆除工事は、特別なことをしているわけではなくて、しろありを駆除・予防するために、ごく普通のことをおこなっています。
たしかに、ぼくは建築に関する知識があるということで、シロアリ駆除を専門にやっている業者さんと比較すれば、シロアリを効果的に駆除する方法を見つけ出せたり、シロアリに被害を受けた場所をきちんと修復できるといったメリットがあります。
また、調査状況をわかりやすいようにビデオ中継したり、調査結果をわかりやすく理解していただけるように調査報告書を工夫したり、日々努力はしています。

しかし、調査や駆除の作業自体は特別なことをしているわけではありません。
当然のようにシロアリ駆除業者もインターネットで検索される時代です。
現在、安さを売りにしている全国的な範囲で集客して駆除工事する業者もでてきました。
そういった業者はネット上で集客して、工事は地元のシロアリ駆除業者に発注します。安さの秘密は地元の業者への安い発注金額です。
そうなると、薬剤を規定濃度より薄めたり、作業を手抜きしたり、工事の品質が落ちます。
品質が落ちるとシロアリを駆除しきれません。最近になって、シロアリ駆除の工事保険を損害保険会社が受け付けてくれなくなってきたほどです。
地元のシロアリ駆除会社に利益が配分されないと職人が育てられなくなります。すでに若い職人の数は減る一方です。
このままでは、業界自体が悪いほうに行ってしまう。

だから、普通の駆除工事ができる環境づくりが必要だと思っています。
たとえば、全国のシロアリ駆除の業者さんや職人さんとネットワークをつくって、ビデオ中継を取り入れたシロアリ調査方法を指導したり、パソコンが苦手な職人さんたち向けに写真や図面を使ったわかりやすい報告書の制作サポートしたり、ぼくが出張して講演したりして、環境づくりができないかと思っています。
集客してくれる会社に頼らず、価値ある仕事を自分たちで発信できるようになれば、やりたくない手抜き工事なんかしなくてもよくなって、普通の駆除工事ができるようになる。そのためのサポートができないだろうかと思っています。
今後、「あんしん白アリ『北陸』」を北陸に限定せずに、志のある全国のシロアリ駆除業者さんにぼくたちのノウハウを伝えて使ってもらえたら、駆除したあとに喜んでもらえる人が増えるんじゃないだろうか。
さらには、しろあり業界の団体であるしろあり対策協会と建築士会を橋渡しして、共同で重要文化財などの保存活動をおこなうなどできたら、業界のイメージも役割も大きく改善されるのではないだろうか。
 
「大学院を出て、オレ、なにやってんだろ?」と言いながらシロアリ駆除していたころは、こんなことを考えるようになるなんて夢にも思いませんでした。
もし、自分にできることがあるのならば、ぜひそれに向かって進んで行きたいと思います。

しろあり防除施工士×一級建築士

シロアリは建物構造に大ダメージを与えるため、住宅構造の専門的判断が必要です。「あんしん白アリ北陸」では一級建築士による耐震診断も行っています。

悪徳業者との遭遇

いまだにシロアリ駆除を偽る悪徳業者が存在します。皆さまが騙されないためにも、ぜひ、石川・富山で実際に遭遇した事例を知っておいてください。